MOONLIGHT
「まあ、皆の気持ちもよくわかるけど。俺が一番、城田さんには関係あるんだ。俺に至ってはさ、死活問題だから。」
まだ、典幸を後ろから拘束したままの、青山さんが疲れたように、喋りだした。
その途端、戸田がゲラゲラ笑う。
「何だよ、元々は菊坊が悪いんじゃねーか。」
「そうだけど…。ああ、城田さん、もう謝らなくていいっていわれたけど…。」
そこで、典幸を青山さんが離した。
私の方に向き直る。
そして、姿勢を正し深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。」
見事なまでの、謝罪。
「え?」
「誤解とは言え、大変失礼なことを言いました。俺が反対だったら、あんな事をあの状況で言われたら、殴っていた。」
って、青山さん、さっき典幸に暴力では何も解決しない、って言っていなかった?
「だけど、逆に、ゆまのお腹の子供の事を気遣ってくれた…。俺は…「もう、いいです。」
私は、気持ちが楽になった。
「え?」
「だから、もういいんです。青山さんが私の気持ちに気がついてくれたから。あの時、色々重なって、負の気持ちばかりだったけど、お腹の赤ちゃんの事だけは、プラスの気持ちになれたんです。マイナスだらけの私から、それって、私のいいところをみてくれたんでしょう?だから、もういいです。」
清々しい気持ちでそう言えた。
だけど。
「レイはいつだって、そうだ。」
突然、オサムが口を開いた。
震える声。
「オサム…。」
「レイはいつも、優等生で、バカな俺と違って、何でもできて…。」
「そりゃー、T大主席で卒業だからな。近年まれに見る、超優秀な成績だったしなー。医師免許とるのに2年かかったお前とは、大違い。」
神田先輩…。
『超』の使い方、キモい。
「はっ、結局そうなんだよ、いつだってレイの方が、上で…。病院だって。いつのまにか、スタッフも患者も、『城田先生、城田先生』って。お袋が、中川クリニックじゃなくて、城田クリニックになる、って言ったことが、本当に、なりそうで…「ホント、バカだね。オサム。」
グジグジ、言うオサムについ言葉がでた。
いつもは、傷つけるような事は言わないけれど、多分、これが最後になると思うから、伝えられることは、伝えよう。
バカ、と言われてオサムの顔がひきつった。