MOONLIGHT
瀬野将のイタリア車で目指すのは、葉山の別荘。
小学校の頃は、海水浴がてら夏休みに一度は来ていた。
でも、子供でいつも車だったから、場所がわからなくて。
不本意ながら、典幸が同行した。
今日はそのまま、別荘に泊まるらしい。
「レイ、その犬、ずっと俺を睨んでるんだけど、どうにかしてくれないか?」
典幸の声が、心なしか震えている。
相変わらず、情けないやつだ。
遅くなりそうなので一度マンションに戻り、弁慶を連れてきた。
助手席の私に抱かれ後ろ向きで、弁慶はずっと典幸をガン見している。
「本当に、典幸って昔から犬と相性悪いよね?本宅にいたピーターとベンにもウケが悪かったよね?人懐っこくて、あんなに可愛かったのに…。」
「へえ、葉山さんって犬苦手だったんだ?弁慶は確かに愛想が悪くて人懐っこくないけど…可愛い犬もダメなんだ?」
クスクスと瀬野将が笑う。
「・・・将くん、言っておくけど、ピーターとベンって、防犯用に庭に夜放しておくドーベルマンだけど?それ、可愛いと思うか?」
「……。」
「えっ、すごく可愛かったけど?2匹ともいつもお腹見せて、撫でて撫でてって来たし。」
「それって、レイだけだぞ。俺なんか、突然追いかけられて、尻噛まれたんだぞ?」
なんか、典幸被害者ぶってるけど。
「ねぇ、そうなった原因をはしょってるでしょ。確か、庭の隅に、エロ本隠そうとして、コソコソ怪しい行動してたからベンが、吠えて。典幸が暴れたから、ピーターがお尻甘がみしたんでしょ?ホント、アホだよね。」
「アホっていうな、俺が尻噛まれて逃げ回ってるの腹抱えながら笑って見てたくせに。散々俺が追いかけまわされて飽きた頃にやっと、2匹の名前呼んで簡単にやめさせる技つかって。そんなことができるなら早く止めろよっ。」
その時の事を思い出したのか、典幸がムッとした顔をした。
人を頼るな、アホ。
相変わらず、私たちの会話を聞いて瀬野将は笑ってるし。
「安心した。レイ。葉山さんと仲良しで。ずっと、寂しい思いしてたかと思って、心配してたけど。いい兄ちゃんいるじゃないか。」
何を勘違いしたのか、瀬野将がムカツくことを言った。
「典幸と仲良くなんかない!!」
今度は私がムッ、とした。
だけど、それに対して典幸はご機嫌で。