MOONLIGHT


ムッとしたまま、葉山の別荘に着いた。

来客用の、駐車スペースにイタリア車を停めた。

車から降りると。


「レイッ!!」


久しぶりに見る頑固ジジイだった。

会うのって、1年ぶりくらいか。


「ウザい。何で、いい年して泣いてるのよ。」


横を向いて顔を見ないで、話す。

それなのに、ためらいもなく私を抱きしめる。

冷たい…。

私を抱きしめた体が冷たいことに気がついた。


「………。」

「顔を見せてくれ。1年ぶりだ。中川と別れたし、健康診断という大義名分もなくなって、どうやってレイと会おうか考えていたんだ。よかった、元気そうだな?」


こうやって、どれだけ私が悪態をつこうが、この人は私をあきらめない…。

ため息がでる。


「とりあえず、親父家に入ろう。俺がレイを連れてここへ来るって電話入れてから、外で待ってたんだろ?風邪引くぞ?歳なんだから無理すんなよ。ほら、将君もなかへ入ろう。紹介は後だ。」


典幸はバカで根性無しだけど、私が意地を張ってどうしても言えないことをさらりと平気で言える。


いつも、それが、うらやましかった・・・。





家政婦さんが入れてくれたコーヒーを飲みながら、チラリと瀬野将を見た。

コーヒーに手もつけないで、珍しく緊張しているようだ。


「あの、初めまして。瀬野将と申します…。」


うわ、いきなり喋り出した。

だけど。


「うん、わかった。結婚に賛成だから。」

「「はっ!?」」


何を言ってるんだ、頑固ジジイ。

何にも言わないうちから、何で賛成なんだ?

私が、解せない顔をしていたのか、典幸が笑いながら、これまでの経緯は全て報告済みだからと、笑顔で言いやがった。

余計な事を。


結局、瀬野将が意気込んできたわりに、頑固ジジイは速攻で結婚に承諾した。

賛成理由は。

筋金入りの意地っ張りな私が、素直に甘えられる相手だからだそうだ。

何となく、わかった。

結局そこなんだよね。


瀬野将はホッとしたようで、冷めたコーヒーを一気に飲んだ。

そんな姿がなんとなく嬉しかった。


「それよりも、レイ。レイが何と言おうが、中川はつぶすからな。」


それも、典幸か。

典幸、どんだけチクリ屋だよ?


「あなたには、関係ないでしょ?あかの他人何だから。オサムには子供が生まれるの。子供が可哀相でしょ?」







< 68 / 173 >

この作品をシェア

pagetop