大罪

再生へ至る光

目を開けると、そんな光景は無く、何事もないように杭に打ち付けられているだけだ。
(夢?)
タナトスは驚く。
やけに現実味がある幻覚だった。
「やれやれ。」
そう言いながらひらりと舞い降りたのは無邪気な顔をした少年だ。
その傍らには瓜二つの気難しい表情の少年が居る。
2人の少年はタナトスをみる。
「自己紹介が遅れたね。僕はサイドレ・ライティア。サイってよんでね。」
「紹介する義理でもないが。私はアイリール・ライディア。」
「アイって呼ぶといいよ!」
「こら、勝手に言うな。」
「ケチケチするなよー。」
無邪気な少年に気難しい顔で呆れた。
「やはり、宝石は体内に取り込まれているようだ。」
藍畑の手元には宝石はない。
そのことを認識して、藍畑はタナトスを冷淡に見る。
「でも、悪魔憑きではない。」
アイはタナトスを見る。
「だが、近しいものみたい。」
サイもタナトスを見た。
「排除しないと。」
「即刻な。」
そう言うと二人は手を合わせた。
“Υπ?λοιπο τη? ζω?? και θαν?του(生死の天秤)”
すると、裁きの間へ通じる扉が現れた。
(私とゼロの裁きと似ている。……人間にそんなこと出来る筈はない。)
タナトスは扉を見る。
(まさか、神の器なの?)
そして、扉から手が出た。
「さぁ」
「送ってやろう。」
「ふふふふふ……!」
2人は妖しく笑う。
藍畑が部屋から出るのが見えた。

刹那。

空間は白く塗りつぶされた。

裁きの間なのだと直ぐに理解したが、どうしてあの二人が使えるかが不可解だった。
「タナトス。」
その声は良く知った声だ。
「主。」
タナトスは其方を見る。
くらくらとする。
息が詰まる。
「ある、じ。」
手を指し伸ばすと、色白の指先が頬に触れた。
神の姿が瞳に映る。
「タナトス。」
もう一度、名前を呼ぶ。
そして、抱き寄せた。
息が出来ない程の苦しさが襲う。
「サイ、アイ。」
「はい。」
神にアイとサイは頷く。
その背には羽根があった。
「天使、か。」
タナトスは納得した。
天使とは、神からの使者で門を開く権限が与えられている。
悪魔でいう“夢魔”と同じらしく神により生かされている。
(差し詰め、この二人は裁きの間に入られる“上級天使”というところか。)
タナトスは考察する。
「戻って良い。」
そう言われて、二人は姿を消した。
「……っ、」
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