当て馬ならし
一人は平気と言いながら、
今朝のこの景色に淋しさを
感じていたのは本当で。
見抜かれちゃったなぁと思うと、
恥ずかしいより嬉しくなってしまうのは
何故だろう・・・・

「朝から、何にやけてる」
眠そうな声が素振りの音の合間に聞こえる
「嬉しいとおもったら
 いつでもにやけるわよ。
 ていうか本当に大丈夫だから
 帰って寝ていいわよ」
と彼に目線を向けると、
彼は胡坐からついに
その場にごろんと横たわっていた。
「ちょっと・・・こんなところで!」
さすがに剣をふる手を止めて近寄る
眼鏡越しにみる目は
細く細くなって、
思った以上に長いまつげが
瞳を見る前にその黒を隠した。

ここで寝るの?
あんたほんと王子なのか?
そう突っ込みたくなる。
なんだか書庫に入り浸ってるし
いつもローブに
シンプルなシャツとパンツスタイル
生地はいいものだし、
いつもとても清潔だけど
似たようなのを何着も
もっているのか、
特に代わり映えしない服装だった。
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