形なき愛を血と称して
(三)
“材料”を調達するのは、決まって深夜二時。
二階北側の部屋は、あちらとこちらを繋ぐ場所であり、この部屋に足を踏み入れる時は決まっている。ーーリヒルトは、吸血鬼を召喚しようとしていた。
床に染み込んでいる紋様を鮮明にさせるために、羊の血で上書きをする。中央部には羊の心臓に、薔薇色の気体が入った小瓶。
羊の心臓は通行料であり、気体は物々交換。
カウヘンヘルム家が契約した吸血鬼が一匹をこちらに貰う代わりの薬だが、前回のこともあり、“濃度”を薄くしてある。
薬を慣れ親しんだ者にすればクレームが来そうものだが、そもそも“材料”を渋る方がいけない。見せしめ踏まえて、今回は極上の物を寄越せば良いのだが。
「いい加減、あちらも人間の従うのは嫌になってきたかなぁ」
猟銃に弾を装填しながら、呟く。
言葉の意味が分からずも、主人の声色と同じ鳴き声を傍らのラズが上げた。
あちらの家系も年数が経てば世代が変わる。カウヘンヘルム家を没落してはならないと奮闘した先祖から、もう畳んでしまってもいいかとも思えるリヒルトに代換えしたように、吸血鬼側も心変わりをする。
現当主の顔さえも分からないが、送られてくる者が劣悪となっているのならば、薬にそれほど執着しきれていないようだ。