形なき愛を血と称して
『産まれて来たことが間違いだったんだ』
過去を重ねてしまった。
自身の過去(汚点)。今となっては、もう割り切ってしまったことだ。女と重ねるのは間違っているのに。
この女も、誰からも愛されないのかとーー思ってしまった。
「……」
手を握る。爪が食い込む痛みで平常を取り戻し、リヒルトは部屋を後にした。
「好きな所に行くといい」
扉を閉めた後、リヒルトが口に出来たのはそれのみ。
他の言葉がよぎったが、黒く塗りつぶされた。