Special to me
『アイツに欲がないのと、助役になってしまうと、どこに配属されるか不透明になることが怖いんだろうな。お客様と接するのが好きなアイツにとっては、そんな環境になるが耐えられないんだろう』

「どこに配属されるか分からないっていうのは、どういうことなんですか?」

『助役級に受かるっていうのは、一般企業で言うと総合職に転換するようなものなんだよ。だから今までは駅員やっていればいいものが、僕みたいに駅の助役ならまだいいんだけど、場合によっては本社でデスクワークになる可能性も秘めているんだ。僕だって、いつそっちに行くか分からない。その代わり、確実に給料は上がるけどね』

「そうですか・・・」

晃樹が私に対して迷っているのは、この試験のことも絡んでいるのだろうか。

『それを君に見せたのは、君に説得をお願いしたいから、というわけではないんだけど、いや、むしろ君が説得することが晃樹には逆効果になる可能性もあってね』
「逆効果?」

『晃樹の君に対する迷いの原因に繋がる話。君は龍成社の社員でしょ?だから、いわゆる世間ではエリートコースなわけだ。でも米原自身は高卒でただの鉄道員。助役試験を受けて、たとえ受かったところでその事実は変わらないし、君と不釣り合いなのではないかって思っているんだ』

「そんな・・・」
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