ウェディングドレスと6月の雨

 会議は順調に終わり、営業部長が私に穂積さんへの会議内容の申し伝えを頼んだ。皆がガヤガヤと談笑する中、穂積さんは黙って廊下に出て行く。私は立ち上がり、あとを追い掛けた。


「穂積さん」


 予定を聞こうと穂積さんを呼び止める。穂積さんは歩くのを止めて振り返った。


「何だ」
「会議前半のご報告を」


 穂積さんは腕時計をちらりと見た。


「今なら少し時間はあるけど、アンタの都合は?」
「今日は……」
「そうか。じゃあ」


 そう言って穂積さんは鞄から革の手帳を取り出した。そして今週のページを開く。チラリと見えた見開きのページ……相変わらずビッシリと書き込まれた予定表、空いてるのは日曜日だけだ。その日曜日に会おうと言って欲しい……。


「来週、月曜の朝でもいいか?」
「……」


 月曜。空欄の日曜日を通り越した。


「忙しいなら午後」


 何故にこんなに気になるんだろう。もう、駄目だ。聞いてしまった方がいい。聞いて駄目になるならそれでもいい。どのみち、もう、誘ってもらえないなら……。
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