ウェディングドレスと6月の雨
 喧嘩を売られても穂積さんは黙っていた。かといって逃げる風でもなく、ドンと構えている。何の反応もない穂積さんに苛ついたのか高田さんは穂積さんのスーツの襟を掴んだ。


「なのに成瀬さんにも声をかけて。なんだ? それとも本社の腰軽女と二股か??」


 動じなかった穂積さんの右腕がゆっくりと上がり始めた。高田さんの胸ぐらを掴む。そしてその腕を持ち上げた。高田さんの踵が床から浮く。


「それとこれとは別だ」
「苦し……っ」
「成瀬、嫌がってるだろ」


 穂積さんがそう言うと高田さんは横目でチラリと私を見た。私は返事をする代わりに俯いた。

 そして次の瞬間、ドン!と鈍い音がした。

< 169 / 246 >

この作品をシェア

pagetop