ウェディングドレスと6月の雨
「痛えっ」


 高田さんの喚く声。まさか穂積さんが手を挙げたのかと不安になった。穂積さんが高田さんを突き飛ばしたのか、床には高田さんが尻餅をついていた。


「遅刻、会議放棄、社内不倫。何でお前みたいな奴が評価されるんだ」
「……」
「ふざけんなよ!」


 高田さんは立ち上がり、パンパンとお尻の埃を払うとシャツを襟を直した。そして穂積さんと私を順に睨んで給湯室を出て行った。

 給湯室に穂積さんと私の2人だけになる。


「大丈夫か?」


 私は頷いた。そして深呼吸した。コーヒーメーカーにコーヒー粉と水をセットする。コポコポと湯の沸く音、ぽたぽたとサーバーに落ちる音。穂積さんは私を助けてくれた。それは穂積さんが私を想っている証拠だと思っていいんだろうか。私の勘違いじゃないって。

 落ちたコーヒーをカップに注ぐ。給湯室の壁にもたれていた穂積さんは小さな窓の外をじっと見つめていた。

< 170 / 246 >

この作品をシェア

pagetop