ウェディングドレスと6月の雨
 それは悪戯にからかうような、甘いキス。


「冗談」
「もう……」
「本当は欲しいけど我慢する」
「あの」
「次に会えるのは……来年か」 


 穂積さんは壁のカレンダーを見つめて。今日は12月29日。明日私は実家に帰省する。


「そうですね」
「パジャマとか部屋着とか歯ブラシとか、置いていけよ。すぐ使うだろ」
「あの……」


 穂積さんは再び私にキスをして。


「“姫初め”って知ってるか?」
「ヒメハジメ?」
「書き初めとか言うだろ。姫っていうのは……」
「わ、分かりました!」


 一気に顔が熱くなる。年明けて初めての……。



「いいか?」
 

 クスクスと笑う穂積さんに、私はコクリと頷いた。






(おわり)(たぶん)







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