あなたと私の花言葉


私はトーヤ君に名前を呼ばれたことがない。

いつも「おい」とか「お前」とか。

だから、今呼ばれてびっくりしている。


私の名前、知っていたんだね…

寝ぼけてても私の名前を呼んでくれた。

嬉しさで心がいっぱいになった。



そういえばトーヤ君の名前知らないな。

塔屋…なんだろう、思えば聞いたことがない。



教えてくれたことも…



「桃…」


いつもとは違う、甘い、少しかすれた声で
私の思考を遮る。


その声が私の全身をビリビリと流れる。
そして胸がきゅうっとなる。



トーヤ君の顔がゆっくりと近づく。

トーヤ君の口が私の耳に到達すると
そのまた甘いとろけそうな声で


「桃…」


と吐息とともに囁いた。


「……っ」

その瞬間耳の奥が熱くなって
全身の力が抜けた。
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