おにぎり屋本舗 うらら
 


それを聞いて、やっとうららは事態を把握した。


小泉はジャンパーの男を尾行中だった。

いつもの仕事用スーツ姿ではなく、ラフな格好をしていたのは、警察だと気付かれないため。


それなのにうららが「お巡りさん」と言いかけて、

彼の尾行を邪魔してしまったのだ。



焦った小泉は咄嗟にうららと恋人関係を演じてみせた。


うららが余計なことを言わないように、口を塞ぎながら、バカップルを演じてみせた。


その努力は虚しく、気付かれてしまったようだが…



うららは深々と頭を下げる。



「ごめんなさい!
お巡りさ…じゃなかった、小泉さんの邪魔をして…」



小泉は溜息をついただけで、怒らなかった。



「お前というイレギュラーの存在に気付くのが遅れた。

それは俺の落ち度だ。お前は気にしなくていい」



そう言って、うららの目的地とは逆方向に歩き去った。



―――――…





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