幸せの花が咲く町で




「あ、おばちゃんだ。」

花屋の前で、何かしている篠宮さんの姿が目に映った。



「帰りに何かお花を……」

そう言いかけた時、花屋の前に自転車に乗った男の子が停まった。



「かーちゃん!」

子供の大きな声に篠宮さんが振り向き、笑顔を見せた。



(あれが、篠宮さんの子供……)



篠宮さんに子供がいるらしいことは、小太郎の話でわかっていた。
年齢から考えても、子供がいることはおかしなことではない。
それなのに、僕は道の真ん中に立ち尽くし、足が止まってしまうほど、動揺してしまって……



「小太郎!
やっぱり、スーパーに行かないか?
おもちゃ買ってやろう。
ゴーヤーマンのゲームにするか?」

「えっ!お誕生日じゃなくても買ってくれるの?」

「あぁ、いいぞ。
そうだ、Tシャツも買わないとな。」



僕は身体の向きを反転し、今来た道を戻って行った。
とにかく、一刻も早くその場を離れたかった。


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