幸せの花が咲く町で




「お母さん、おかわり!」

「このお漬物、うまいなぁ…どこで買ったの?」

「亮介さん、それは、お母さんの手作りですよ。
僕も今、漬け方を習ってるところなんです。」



あれから、またひと月が流れた。
最近では、六人でテーブルを囲むことが、当たり前のこととなっていた。



フラワーショップ・さくらは、順調な滑り出しを見せてくれた。
なっちゃん達の暮らすマンションの住人達が増えたこともあるかもしれない。
以前より、仕入れの量は増えているのに、それがほとんど売り切れてしまう。
なっちゃんの提案したアロマやアクセサリーのコーナーも、事の他順調だ。
寛ぎのスペースでおしゃべりをして帰る常連さんも出来て、僕は、手作りのクッキーやケーキを出して、もてなすのが楽しみになった。


店の入り口に、僕は桜の苗木を植えた。
「さくら」の看板の文字は、小太郎が書いたものだ。
いかにも子供らしい可愛らしい文字だけど、亮介さんは、小太郎に書道のセンスがあると信じて疑わない。



小太郎は、無事、小学校に入学した。
入学式には、僕と亮介さんが出席した。
ほとんどは両親か、そのどちらかが出席しているので、僕達はおかしな具合に目立ってしまった。
小太郎はとにかく翔君と同じクラスになれたことが嬉しくてたまらないようだ。
早速、篠宮さんのお母さんのことを「おばあちゃんが出来た!」と翔君に紹介していた。



肝心の僕と香織さんの仲は、特に進展はない。
なっちゃんが心配して、先日ついに二階の僕の部屋を香織さんに明け渡した。
僕の荷物は、なっちゃん達が暮らしていた部屋に移されて、「頑張れよ!」って、バシンと背中を叩かれた。



僕達の恋愛は、まだ少し時間がかかるかもしれない。



だけど、明らかに僕の周りも、そして僕自身も変わっていて……



母さんや父さんが、叶えられなかった幸せな生活が、この家で…この町で着実に叶えられてきているような気がする。



僕もいつか花を咲かせたい。

母さんや父さんの果たせなかった夢を叶えるため、僕はここで大きな幸せの花を咲かせたい。



(……きっと、出来る。)



僕には力強い皆がいてくれるから。



僕一人では出来なくても、皆の力を借りればきっと……



(母さん、父さん……
もうしばらくかかるかもしれないけど……必ず咲かせてみせるから、気長に待ってて……)



不意に頬を撫でたそよ風が、両親からの返事のように思えた。



~Fin.


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