エンビィ 【完】
エレベーターに乗った百瀬は、会場である一階ではなく、なぜか二階のボタンを押した。
その不可解な行動の理由を尋ねれば、
「一階は人がごった返していて、よく見えないだろうからと……伊織様が配慮して下さったのです」
とても事務的な声音で、そういった。
二階は元々、観客用の席が用意されてあるらしかった。
オペラ会場に似た構造らしい。
個室にように区切ってあり、横も遠い正面もチラチラと客がいる。
死にはしないだろうが、それなりに高さのある位置から見下す。
派手なユキノでも見つけてやろうとして目についたのは、
絶対にさっきまでなかったモノ。
―――――そういえば。
「今日は有名なピアニストを、海外から呼んでるんだったかしら?」