エンビィ 【完】
岸壁に、ひっそりと佇むような儚さで苦笑する伊織に、デジャブを感じる。けれど、どこで見たのか思い出せない。
伊織を正面から、見たいと思う。
でも……見たくないとも、思ってしまった。
伊織自身も、あたしからすれば高嶺の花。
けどユキノは…?
伊織からすれば、ずっと傍にいて、
一緒に笑い合える、
そんな関係でしょう――?
でも今の伊織の雰囲気や物言いからして、伊織にとってユキノは、高嶺の花ではないにしろ、それに似た、綿雲のような、掴めそうで掴めない、そんな羽のような存在なのかもしれない。
「そういえば、さっきパーティ会場に相応しくない人がいたわね………ユキノさんと親しかったようだけど……彼もまた貢いでいる一人なのかしら…?」
あたしにしては珍しく、
嫌味で言ったわけじゃなく、思い返して独り言のように呟いた。