エンビィ 【完】





岸壁に、ひっそりと佇むような儚さで苦笑する伊織に、デジャブを感じる。けれど、どこで見たのか思い出せない。


伊織を正面から、見たいと思う。

でも……見たくないとも、思ってしまった。




伊織自身も、あたしからすれば高嶺の花。



けどユキノは…?


伊織からすれば、ずっと傍にいて、

一緒に笑い合える、

そんな関係でしょう――?



でも今の伊織の雰囲気や物言いからして、伊織にとってユキノは、高嶺の花ではないにしろ、それに似た、綿雲のような、掴めそうで掴めない、そんな羽のような存在なのかもしれない。




「そういえば、さっきパーティ会場に相応しくない人がいたわね………ユキノさんと親しかったようだけど……彼もまた貢いでいる一人なのかしら…?」



あたしにしては珍しく、

嫌味で言ったわけじゃなく、思い返して独り言のように呟いた。




< 97 / 195 >

この作品をシェア

pagetop