ガラスの靴じゃないけれど


「響さん。新しい靴のオーダーは入りましたか?」

「ああ。数件な。その中に咲子からゴールドのパンプスを作ってくれってオーダーがあった」

「ゴールドですか」

「ああ。派手好きなアイツらしいだろ」

彼と私が気にしていたのは、移転したせいで固定客が離れてしまうこと。

でも、それは取り越し苦労だったみたい。

彼が作る靴は、履き心地が良く、吸い付くように足に馴染む。

一度履いたら、誰だって彼が作る靴の虜になってしまうのだ。

もちろん、私もそのうちのひとり。

真剣な表情を浮かべながら、靴に向き合う彼の横顔が。

独特な革の匂いが。

カタカタと革を縫製する、ミシンの音が。

コツコツと響く、釘を打ち込む音が。

靴作りに関わるすべての過程の虜になってしまった私の心は、一足先に靴工房・シエナに向かっている。

この冬が終われば、私が好きな季節が訪れる。

その時だけは靴を作る手を休めて、あの運命のチェリーピンク色のパンプスを履いて出掛けよう。

パンプスと同じ色をした、満開の桜をふたりで愛でるために.....。


            ----END----


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