ガラスの靴じゃないけれど
「そうじゃねえよ。ったく。鈍感だな」
彼は口悪くそう言うと、私の左手をそっと握る。
「若葉はすでに予約済みっていう印だ。勝手に外すことは俺が許さないからな」
彼の節くれだった指に握られたものを目にした瞬間、私の胸はドキドキと音を立てて高鳴り出す。
その私の左手の薬指に滑るようにはめられたのは、ダイヤモンドのエンゲージリング。
「俺の気持ちだ。受け取ってくれるだろ?」
「も、もちろんです! 」
左手を高く掲げながら、うっとりと薬指を見つめれば、キラキラと眩しいほどにダイヤモンドが光り出す。
「響さん。とても嬉しいです。ありが...ぅん」
感謝の気持ちを伝えるために運転席に座っている彼に向かって顔を向けると、瞬く間に唇を熱く塞がれる。
会えなかった五日分の想いを込めながら重なり合う唇を名残惜しく離せば、片道二時間のドライブデートの始まりだ。