ガラスの靴じゃないけれど


質問を質問で返された私は、もうそのことには一切触れずに、純粋に知りたいことだけを聞いてみる。

「響さんの名字は?」

「五十嵐(いがらし)」

「歳は?」

「37」

「結婚は?」

「独身だ」

「どうして靴屋さんを?」

今まで言いよどむことなく、私の質問に答えてくれていたのに......。

最後の質問だけは、すぐに答えが返ってこなかった。

誰にだって触れられたくない領域はある。もしかしたら地雷を踏んだのかもしれない。

私から視線を逸らした彼を見つめながら密かにそんなことを考えていると、ポツリと答えが返ってきた。

「死んだジイさんの跡を継いだだけだ」

「あっ...ごめんなさい」

「何故、オマエが謝る?」

「だって...」

「もう昔の話だ。気にすることはない」

彼の声は、どことなく寂しげで、悲しげだった。

あのレトロ感いっぱいのシルバーのミシンも。

見慣れない数々の用具も。人の足形をした模型のようなものも。

きっと、彼のお爺様が大切に使っていたものを譲り受けたのだろう。


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