ガラスの靴じゃないけれど
「オマエのようなギリシャ型の足に合うのはアーモンドトゥやポインテッドトゥのように爪先が尖った形のパンプスだな」
ピアノの鍵盤の上を滑るような優雅な彼の指の動きは心地良くて、恥ずかしいという感情が次第に麻痺していくのを自覚した。
でも、それも束の間。
特別授業らしい彼の一声で、私はハッと我に返った。
「ここまでで質問は?」
望月さんという素敵な彼氏がいるのに、今日出会ったばかりの男に気を許してしまうなんて......。
自分の軽率な行動を反省した私は足を引くと、カウンターの上に色気なく膝を抱え込んだ。
「こうやって足に触れて落とした女性の数は何人ですか?」
「...それがオマエの質問か?」
「そうです」
靴には一切関係ないことを聞いたのは、いたずらに私の足に触れたことへの小さな仕返し。
「そうだな...何人だと思う?」
身体の前で腕を組み、余裕のある笑みを浮かべる彼は、やはり大人で女の扱いに慣れていると痛感した。
「...聞いた私がバカでした」