ガラスの靴じゃないけれど
望月さんに口止めされているせいもあるけれど、私たちが付き合っていることが噂になったら、自分の身に何が起きるかわからない。
これは冗談ではなくて、それほど望月さんは野口不動産株式会社の女子に人気があるのだ。
綺麗系女子から可愛い系女子まで選り取り見取りの中から、どうして顔もスタイルも性格も平凡な私をチョイスしたのか。
その理由のひとつは、出世のためではないかと思っている。
私の父親は、グループ会社の野口不動産リゾート株式会社の執行役員。
入社8年目の望月さんが結婚を意識するのは、当たり前。
その相手が野口不動産リゾート株式会社の執行役員の娘なら、少しは出世に有利だろう。
自分の父親が役員でなかったら、私立大学文学部出身の私が大企業である野口不動産株式会社に入社することなどできなかったはず。
縁故採用されたことと、父親がグループ会社の役員だということは口外していない。
でも何故か、私の事情が知れ渡っているのが現状だったりするのだ。