ガラスの靴じゃないけれど


縁故採用だから。父親が役員だから。仕事が出来なくても仕方ない。

そう思われることが何よりも嫌だった私は、総務部で前向きに仕事に打ち込んできた。

それは開発事業部にヘルプとして異動しても同じ。

コピーも、電話の取次ぎも、ファイリングも、開発事業部の皆さんの役に立つように。と、思いながら一生懸命にこなした。

そんなある日。ミーティングルームの後片付けをしていると、突然声を掛けられた。

----「一条さん。いつもありがとう。手伝うよ」

「え?手伝うって...ここは私ひとりで大丈夫です」

望月さんが不在だとプロジェクトが回らないことくらい、雑務ばかりしている私でもわかる。

だから有り難い申し出を断ったのに......。

望月さんはワイシャツの袖口ボタンを外すと、腕まくりを始めた。

少しだけ露わになった望月さんの腕に浮き出ている血管は、男らしくて色っぽい。

心臓をドキドキ鳴らしながら、望月さんの腕を食い入るようにじっと見つめた。


< 40 / 260 >

この作品をシェア

pagetop