ガラスの靴じゃないけれど
「ん?どうした?」
「い、いえ!なんでもありません」
知的な雰囲気を漂わせている望月さんの端麗な顔に見惚れるならともかく、腕に見惚れていましたなんて答えたら、変なヤツだと思われてしまう。
急いで視線を逸らした私は、腕に見惚れていたことを誤魔化すように後片付けの続きに取り掛かった。
それなのに望月さんは素早くモップを手にすると、フロアを拭き始めてしまう。
「もう!望月さんったら!私の仕事を奪わないでください!」
「奪うって...」
私が開発事業部に異動になった理由のひとつは、程々に雑務ができるから。
だから、これは私の仕事。
「ここは私に任せて、望月さんはどうぞお仕事に戻ってください」
有能な望月さんにモップは似合わない。
私は小走りをして、望月さんが手にしていたモップをひったくるように奪い取った。
「仕事に戻れって言われてもね...。一条さん?もう12時過ぎているの知っている?」