ガラスの靴じゃないけれど
松本チーフに向かってきっぱりと断った望月さんは、また肩を震わせ始めた。
思い出し笑いをするほど、あの返信がどう可笑しいのかさっぱりわからない私は、頬を膨らませながら望月さんの横を通り過ぎようとした。
その時。望月さんに呼び止められる。
「あ。一条さん。あの件。了解だから」
何の件なのか、何が了解なのか。
それを理解できた人は開発事業部の中で、私以外いないはず。
だって望月さんは、私のメールに対して直に返事をしてくれたのだから。
散々悩んだ挙句、私が返信したのは【また、手を繋いでください】という短いメール。
これのどこが、そんなに可笑しいのか、私にはわからない。
「はい。よろしくお願いします」
でも、望月さんの笑顔が見られたことと、また手を繋いでくれると約束してくれたことは単純に嬉しい。
その喜びを隠しながら望月さんに一礼をすると、午後の業務に取り掛かった。