ガラスの靴じゃないけれど
あと一時間で、定時の18時を迎える頃。
松本チーフがファイリングをしている私の元に、近寄ってきた。
「一条さん。急で悪いんだけれど、明日、休日出勤をお願いできないかな?」
『明日』と聞いた私の頭に浮かんだのは、ある催し。
「もしかして住民説明会ですか?」
「明日、説明会があることを知っていたのか」
「説明会の冊子を作成しましたから」
つい、先日、私は光が丘駅北口商店街再開発事業案という、難しいタイトルの資料を作成したばかり。
そこには、明日の18時から住民説明会が執り行われることが記載されていた。
「実はその住民説明会の受付を、一条さんに担当してもらいたいんだ」
再開発プロジェクトのことを詳しく知らない私が、受付をして大丈夫なのだろうかと一瞬、不安になった。
でも雑務しかこなせない私に受付を任せてくれたことが嬉しくて、不安なんかあっという間に消え去る。
「はい!是非、やらせてください!」
松本チーフはホッとした表情を浮かべると、一転して豪快な笑顔を私に向ける。
そんなに喜んでくれるとは思ってもみなかった私の頬も、自然と緩んだ。