泣き虫王子と哀願少女
「! 潤君っ! ここだよっ! 助けてっ!!」
緩んだ指の隙間から、もう一度大声で叫ぶ。
「っ! もしかして、深海かっ!?」
私の声が届いたのか、潤君が私の名前を呼んだ。
「待ってろ、今行くっ」
そう言って潤君がドアに手を掛けるが、鍵がかかったドアはなかなか開かない。
「くっそ。鍵かけてやがる」
廊下から伝わってくる焦りの色。
それと同時に、先程まで笑っていたリカちゃんからも余裕が消え、顔面が蒼白となっていた。
「深海っ、ドアの前から離れてろよっ」
再び廊下から聞こえてくる潤君の声。
そして ――
ドンッ……ドンッ……ドンッ……ガシャーンッ
「はぁっ……はぁっ……深海っ! 大丈夫かっ!?」
「潤君っ!」
体当たりして無理矢理ドアを押し倒した潤君が、教室へと入ってきたのだった。