泣き虫王子と哀願少女


潤君が……来てくれた……!



ただそのことが嬉しくて、胸の奥が焼けるように熱くなる。



「潤く……」

「こっのアマがっ!」



バシンッ



「うっ……」



潤君の名前を呼ぼうとした瞬間、逆上した先生の平手が私の頬に勢いよく飛んできた。



「須藤……て……んめーっ……!!」



驚きのあまり目を見開いていた潤君が、それを皮切りに先生へとつかみかかった。



「お前っ、深海に何をしたっ!」



先生の胸ぐらをギリギリと締め上げ、怒りに全身を震わせている。



「っ! べつに……ただ遊んでやっただけさ……!」

「遊んでやった……だと……!?」



そう言って潤君が、横目で私を一瞥する。



あっ……!



私のそばに落ちていた、引きちぎられたリボンを目にした瞬間



「……っき……っさまぁーっっ!!」



ドカッ



激しい怒りの声と共に、潤君の拳が先生の頬へと炸裂したのだった。

< 240 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop