泣き虫王子と哀願少女
潤君が……来てくれた……!
ただそのことが嬉しくて、胸の奥が焼けるように熱くなる。
「潤く……」
「こっのアマがっ!」
バシンッ
「うっ……」
潤君の名前を呼ぼうとした瞬間、逆上した先生の平手が私の頬に勢いよく飛んできた。
「須藤……て……んめーっ……!!」
驚きのあまり目を見開いていた潤君が、それを皮切りに先生へとつかみかかった。
「お前っ、深海に何をしたっ!」
先生の胸ぐらをギリギリと締め上げ、怒りに全身を震わせている。
「っ! べつに……ただ遊んでやっただけさ……!」
「遊んでやった……だと……!?」
そう言って潤君が、横目で私を一瞥する。
あっ……!
私のそばに落ちていた、引きちぎられたリボンを目にした瞬間
「……っき……っさまぁーっっ!!」
ドカッ
激しい怒りの声と共に、潤君の拳が先生の頬へと炸裂したのだった。