泣き虫王子と哀願少女


更にどんよりとした空気が2人の間を漂う。


そんな空気を払拭するように、明里が大きな目をくりくりさせながら明るい声で問いかけてきた。



「あっ!そういえば水沢君はどうなったの? 雫のためとはいえ、教師を殴っちゃったんでしょ?」

「うん。でも、あの録画データのおかげで自己防衛が立証されたから何の処分もないみたい」

「そっか。よかったじゃん」

「うん」

「でもさ~……」

「うん?」



明里が頬をポリポリと指先で掻きながら不思議そうに続ける。



「水沢君、なんで雫が数学準備室にいるってわかったんだろうね。偶然にしちゃ、いくらなんでも出来過ぎじゃない?」

「うん。それが私にもよくわかんないんだよね」



首を傾げながら明里に呟く私。



「えっ!? そんな大事なこと、なんで水沢君に聞かなかったの!?」

「いや~、だって聞く暇がなくて……」

「暇なんていくらでもあるでしょ!? あれから3日も経ってるんだし。それに、西野先生が他の先生連れて戻ってくるまでの間だって、聞こうと思えば聞けたじゃん」

「う……」



実はあの事件のあと、すぐにテスト期間に突入したこともあって潤君とは会えていなかったのである。


もちろん会いに行けない一番の理由は、事件中に起きた『あの出来事』のせいなのだが……。

< 251 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop