泣き虫王子と哀願少女
「水沢君のことだって、イケメンだったから自分のものにしたかった、くらいの軽い気持ちだったんじゃない?」
「うん。そうなのかなぁ……。でも、あの最後に見た涙が完全に演技だったとは、どうしても思えないんだよね」
「雫……」
リカちゃんの瞳からこぼれ落ちた大粒の涙が、今でも目に焼き付いて離れない。
あれから何度もあの時の光景を思い出しては、ひとり思い悩んでばかりだ。
眉間にしわを寄せまたしても考え込む私の額に、明里がピンとデコピンをくらわせてきた。
「はうっ。明里、痛いな~もうっ」
「まったく。雫はお人好し過ぎなの! あんなひどいことされたんだから、もうちょっと人を疑うことも覚えなさいよっ」
「う……。うん。それはわかってるけど……」
確かに、今回のことは決して許されることではない。
けれど、潤君のことが好き過ぎてリカちゃんはここまでしたのではないかと思うと、同じように潤君に想いを寄せる私としてはどうしても胸が痛むのだった。
そうは言っても、今となってはもう、真実を確かめるすべなどないのだけれど……。