泣き虫王子と哀願少女


「くっくっくっ、いやぁ悪い悪いっ」



ようやく落ち着いた潤君が、口もとに手を当てたまま私に謝る。



「えっ? ううんっ、全然大丈夫っ」



すっかり潤君に見とれていた私は、そのことを隠すように大袈裟に両手をブンブンと振ってみせる。



「そうか」

「うんっ」



あれ?なんだかおかしい……。



ふといつもと違う何かを感じる私。


小首を傾げて潤君を見やると、「うん?」と潤君も不思議そうな顔で私を見返してきた。



あっ! もしかして……!



潤君の表情の柔らかさを見て、感じた違和感の正体がわかった。



前も優しかったけど、今はそれよりもっと潤君が近くなったような気がする!



そう思うと、なぜだか先程までの緊張が嘘のようにとけ、潤君に言おうとしていたことを思い出した。



「あのね、潤君。この前は助けてくれて本当にありがとう」

「ん? いや、俺そんなたいしたことしてないし」

「ううん、もしもあの時潤君が来てくれなかったら、私どうなっていたかわからないもの……」

「いや、俺は……その……」

「?」



なんだか申し訳なさそうな顔をする潤君。



「実は、あの教室に俺が行ったのは、ニャン太のおかげなんだ」

「ニャン太?」



恥ずかしそうに後頭部をさすりながら、意外なことを口にしたのだった。

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