天国への切符



目の前にいたのはお母さんの姿になった吉岡だった。



「…っ…よく…入ったね」



きっとお父さんに頼んだんだろう。


その服も、そのコートも。

お母さんのお気に入りのものだった。



「…っ……そのお面…わざわざ…作ったの?」



顔にはお母さんのお面がつけられていた。


笑顔のお母さんの写真が、綺麗にプリントされていたお面だった。




嬉しいのに、涙でうまく言葉が出てこない。


言いたいことはたくさんあるのに。


もう一度会えたら、ちゃんと言おうと思っていたのに。



「…んっ……」



息があがって、苦しくて。

あったかくて、胸がいっぱいで。



だけど、吉岡があたしのために用意してくれたプレゼント。


大切にしなきゃって思った。


せっかくくれたプレゼントを受け止めて、ちゃんと応えなきゃ…って。


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