純愛は似合わない
「父が母と結婚を決めた時、既に母の腹の中には僕が居た」

他の男の子供を自分の子として受け入れたのだ、と速人の乾いた声が言った。

「……でもその真相を知っているのは、ごく僅かな人間だ」

ソファに身体を沈めたままの速人は、静かにウォッカを傾ける。

「別の血が混じることなんて、今時珍しくも無い話しじゃない?」

「友野財閥は今まで全て直系が継いで来た。子供の頃から上に立つべく教育を受け、友野ソリューションを任された者が次代の会長になる。それが慣例だった」

今までは、と言いたいのだろう。

憂いた表情の速人は、いつも自信に満ち溢れている彼では無い。

ただならぬ彼に不安を感じ、敢えて軽く答えた。

「貴方が変えれば良いじゃない、慣例なんて。誰が何と言おうと貴方は友野を掴む資格があるし、その努力もして来た。例え血縁でもお馬鹿な息子だったら友野を背負うどころか、体よく排除される筈だもの」

速人はまだ目を閉じたままだ。

だが口元だけ緩ませ、また大きく息を吐いた。

「初めてお前に褒められた気がするよ」

「……事実を言ったまでよ」

私は正座していた足を崩して座りなおす。

フローリングへ座ったために、直に固い床へ脛の骨が当たって痛かったのだ。

私の身じろぎした音を聞き付け、速人は目を開けた。

「……警戒しているのか?」

「当然でしょ」

不法侵入して来たのは速人だ。

例え、どんな秘密を告白をしたとしても。

「……お前はこれからどうしたい? 例えば僕との婚約を破棄したとしたら…何がしたいんだ?」
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