純愛は似合わない
―――――
―――
「相変わらず、人の好さそうな顔してたね」
程無く光太郎が帰った後、ようやく手の空いたヒロが私のカウンター前に立って言った一言。
その言葉の棘に気付かない振りをして「それが光太郎ちゃんなのよ」と返すと、ヒロは鼻で笑う。
「でもさぁ、そういう人でも計算とか打算とかする訳だよね。あー人間て怖い怖い」
「いーや、そう言ってる今のあんたの笑顔のが怖いんだけど」
私の指摘にヒロはニヤリとする。
そんな悪そうな顔して、笑い掛けないでほしい。半径10メートル内にいる女達から、やたらと突き刺さる視線を受けるのは頂けない。
「早紀ちゃんも口悪いくせに、元カレにはぬるいんだね」
私と光太郎は確かに付き合っていた。だからと言って、当時大学生の私が彼と結婚の約束をしてた訳でもなく。
普通に恋愛して終わっていたのなら、それはそれで良かったのかも知れない。
問題は光太郎を奪った相手が、千加ちゃんだったことだ。
「光太郎ちゃんは今やお義兄さんだし。今日だって、あそこのホテルで懇親会やるのが社長様命令だから会っただけ、ってね」
グラスを拭いていた彼の手が止まり、視線が合う。
「早速、あの新社長と顔を合わせたんだ」
「随分、情報通じゃない」
「経済欄もちゃんと読んでるよ」
「あらら、勉強熱心。チャラいのを売りにしてるのかと思ってたわ」
「……」
キャッチボールしなさいよ。黙って上目遣いとか、止めてほしいわ。
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「相変わらず、人の好さそうな顔してたね」
程無く光太郎が帰った後、ようやく手の空いたヒロが私のカウンター前に立って言った一言。
その言葉の棘に気付かない振りをして「それが光太郎ちゃんなのよ」と返すと、ヒロは鼻で笑う。
「でもさぁ、そういう人でも計算とか打算とかする訳だよね。あー人間て怖い怖い」
「いーや、そう言ってる今のあんたの笑顔のが怖いんだけど」
私の指摘にヒロはニヤリとする。
そんな悪そうな顔して、笑い掛けないでほしい。半径10メートル内にいる女達から、やたらと突き刺さる視線を受けるのは頂けない。
「早紀ちゃんも口悪いくせに、元カレにはぬるいんだね」
私と光太郎は確かに付き合っていた。だからと言って、当時大学生の私が彼と結婚の約束をしてた訳でもなく。
普通に恋愛して終わっていたのなら、それはそれで良かったのかも知れない。
問題は光太郎を奪った相手が、千加ちゃんだったことだ。
「光太郎ちゃんは今やお義兄さんだし。今日だって、あそこのホテルで懇親会やるのが社長様命令だから会っただけ、ってね」
グラスを拭いていた彼の手が止まり、視線が合う。
「早速、あの新社長と顔を合わせたんだ」
「随分、情報通じゃない」
「経済欄もちゃんと読んでるよ」
「あらら、勉強熱心。チャラいのを売りにしてるのかと思ってたわ」
「……」
キャッチボールしなさいよ。黙って上目遣いとか、止めてほしいわ。