純愛は似合わない
今思えば、中学生の彼が寄りかかるように頼られても困っただろうと思うけど。でも、その時の私は何かにすがりたかった。

そんなところを不覚にも、当時大学生の速人に見られていたのだ。

その日は、母の友人だった美好さんがお線香をあげに来てくれた日で。速人は美好さんのお抱え運転手代わりに同行していた。

でも、イチャつくとは言っても中学生の私がしたことなんて所詮、人目に付かない裏庭のベンチでハグとかキスした程度だったはずだ。

ただ彼の中ではインパクトが強かったのか、たまに思い出したようにこの話しを蒸し返す。


「あんなの、子供の可愛いじゃれあいだったわ」

「馬鹿言え。あそこで僕が声を掛けて無かったら、5分後には間違いなく食われるところだった」

海老をサクサク食べながら何言ってるんだか。

「裏庭なんかでそんなことするわけないでしょ」

あの時、初めて速人に声を掛けられたのだ。
それも最大限の魅力を振り撒いた速人に。

結局、中学生の彼は速人に上手く丸め込まれて帰ってしまい、私に至っては今や癪に障るこの男を、速人お兄さんと呼ぶようになった。

その後も、美好さんと出かける時に運転手をしてくれたり、時には『両手に花』なんてらしくもないことを言いながら、あまり家に帰って来なくなった父の代わりに、私達姉妹を連れ出してくれたり。

その頃の私は確実に、速人に憧れていた。
< 40 / 120 >

この作品をシェア

pagetop