純愛は似合わない
そんな彼を見るにつけ、自然と溜息が漏れる。

「そんなに嫌なら、結婚する気は無いって言えば良いだけでしょ。私とは別れたことにすれば? 理由なんて性格の不一致でも方向性の違いでも永すぎた春でも、何とでもなるはずだわ」

速人は、まるで馬鹿な子供でも見るかのように冷たい視線を私に投げ「それくらいで、うちの両親が納得すると思うのか」と一蹴した。

「……大体お前、僕の母と月にどの位会ってる」

「どの位って、予定が会えば月に1、2度だけど」

「最近は会長とも出掛けているらしいじゃないか」

「美好さんが自分は下戸だから付き合ってあげてって。でも、たまにお相伴に預かる程度よ」

「そこまで馴染んでおいて破棄なんて直ぐに出来るわけないだろう? 早紀が急にそんなこと言い出すから、両親は大慌てさ」

「全部私のせいみたいに言わないで」

「婚約破棄したい相手の親に、愛想を振り撒いているのはお前だからな」

「5年も殆ど日本にいないんだもの、貴方の親だって私を気遣って優しくするわよっ」

速人と話していると、苛ついてだんだん体が前のめりになっていく。
感情を露わにし過ぎている自分に気付いて、体のポジションを元に戻した。

「……貴方、成瀬の女とは相性が悪いんだわ。千加ちゃんには振られたし、私とは喧嘩にしかならない。これ以上、婚約者の真似を続けるのは無理だと思うの」

< 42 / 120 >

この作品をシェア

pagetop