純愛は似合わない
「なんだそりゃ」

私から言わせれば、2人にはいつもチリチリと火花が見え隠れしている。

気付かない振りをする笹山と、気付いていない里沙。どっちのタチが悪いのか、なんて他人の心配をしてる場合じゃないけれど。


「笹山、あんたはその箸を置いて退場」

私は笹山の使用済み箸を有無を言わさず受け取った。

「え、まさか、奴のを使い回せって言うの?」

明らかに躊躇する里沙に「乙女か」と突っ込みを入れつつ、笹山の箸で残った味噌汁をかき混ぜた。

「はい、消毒完了」

笹山の顔を見て心の中でほくそ笑む。ポーカーフェイスの上手い男の苛立ちが、一瞬だけその目に宿ったからだ。

「俺は病原菌か」

里沙の頭を軽く叩いてから、奴は何事も無かったような顔をして去って行った。

「痛っ。なんで私が叩かれたの? 味噌汁なんかで洗ったの、早紀なのに」

里沙は叩かれたところを自分で撫でながら、じっとりした目で私を見る。

「だって嫌がったの、里沙じゃない。飲みに行った時なんて、笹山が食べてるやつだって美味しそうなら、平気で奪って食べちゃうくせに」

「それは……そうなんだけど。改まってだと恥ずかしいでしょ」

頬を染めて照れる里沙は、やっぱり乙女だ。これで無自覚なのだから、笹山に少しくらい同情してやるべきか。

笹山をからかうのに使った味噌汁と共に、私は残ったふりかけご飯を飲み込んだ。
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