純愛は似合わない
色々な人の思惑が蠢いている。
更なる地位を求める人、金塊を求める人。

その頂点に立つべく生まれた男。

富が大きいだけ、その責任も重く伸し掛かる。

それを支えることは無理だとしても、力になりたいと思ったこともあった。

でも、本当にそれが出来るのは私じゃない。

瀬戸課長は知らないの?
……あの人のこと。


「何回も婚約者が変わったら『 現代の青ひげ 』だって言われちゃうでしょう?」

「君も魅せられて食べられちゃった?」

瀬戸課長は艶のある笑みを浮かべて、私の頬をつついた。

でもその途端に、彼の表情が曇る。

課長は「ちょっと失礼」なんて言いながら、人のオデコに手を置いた次には、自分の額を私の額に押し当てた。

「課長。……コレ、何のつもりなんです?」

「君、熱無い?」

私の言葉を無視して、頬を両方の手で挟む。

「うん、やっぱり熱い」

このラブシーンの途中みたいな仕草に、変な笑いが込み上げて来た。

「何で笑うかな。昼も見掛けた時あんまり食べて無いみたいだったし、一応心配してるんだけど」

眉をひそめながらも頬から手を離さない課長に、余計に可笑しくなってきた。

「だって、心配性の親犬みたい。こんなキスする3秒前みたいな位置にいるクセに」

彼はようやく頬から手を離し、 困ったように肩を竦めた。

「調子悪いの確定の君に、僕が何にも出来ないの知っていて言ってるでしょ。……今日はもう帰っていいよ」

最後は上司の顔をして、私の頭にポンッと手を乗せた。
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