純愛は似合わない
セクハラすれすれの瀬戸課長だけど、無駄口を叩きに来ただけでなく、上司としての気遣いでここにやって来たらしい。

かと言って、今すぐ帰るなんて目立つことをするつもりもないけれど。

「あと1時間ですから。ここでのんびり作業してたら、すぐに終わりますよ」

「かなり具合悪いんじゃないの?」

「大丈夫です。瀬戸課長が来なかったら作業続けてましたし」

私は立ち上がり、ミルクティを飲み干した。

「君も頑固な女だよね」

彼は私の空缶を奪い取って、わざとらしいほど大きい溜息を付いた。

「途中でも本当に定時で終わっていいから。……君に何かあると困るんだよね。色んな意味で」


ドアの方へと歩き出した瀬戸課長の後ろ姿を見送りながら、子供じゃないんだからと、苦笑した。

弄られたがりの変な人。

さりげなく探りを入れられている気もするけれど。

段ボールを折り畳んでいた元の位置に膝を付くと、私の意志とは関係無く、ぶるっと体が震えた。

痩せ我慢をしたつもりは無いが、他人に指摘されると余計に具合が悪くなるのは、何故だろう。

そしてロクなことを考えなくなる。

花嫁候補か……。

先ほどの瀬戸課長の話しを思い返し、口の中で呟いた。

この間の速人の発言も決して大袈裟ではなく、友野と繋がりを持ちたい人達が沢山いるということなのだ。

でも、そんな女性達だって、速人自身を目の当たりにしたら、友野ブランド無しでも欲しいと思うのではないか。

以前の自分のように。
フェイクではなく、愛されたいと。


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