純愛は似合わない
手荒い扱いなら嘲笑出来るし、皮肉混じりなら冷笑出来るのに。

こんな、労るような優しさを突き付けられたら抗えない。

「お前、隙だらけだ。そんな目で見るなよ、病人のくせに」

頼むから寝ないでくれよ、と速人は私の頭を一撫でし、さっさと部屋を後にした。


どんな目をしていたのか。
自分でも分かっている。

きっと物欲しそうに見詰めてしまったに違いない。


この親密な空気がよろしくない。


私は汁だくなパジャマを脱ぎ捨てた。

……当然のように、ブラジャーまで外してあるし。

ベッドサイドに置いてあるタオルを拝借して胸元の汗を拭い、真新しいパジャマに袖を通す。

本当はシャワーを浴びたいところだけれど。

こんな心許ない足元では、速人が中まで付いて来そうだ。

同じようにジットリと湿ったパジャマの下を脱いだ。

流石にパンティは……無いわよね。

多少のことには目を瞑り、と腹部から膝裏の汗を拭っている時だった。

ガチャ。

扉の開く音がして脛を拭く手が震えた。

「良かった。まだ、寝てないな」

私が寝てしまうと思い、急いで用意をしてくれたようだが、寧ろそんなに早く私の身体は動けない。

「……着替え中なんだけど」

そんな言葉は当たり前にスルーされ、速人は部屋の中に入ってきた。

片手にペットボトルのミネラルウォーターをぶら下げ、もう一方の手で小さなトレイを持ちながら。
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