純愛は似合わない
次に目覚めた時、部屋は薄暗くレースのカーテンの隙間からは月明かりがほんのり覗いていた。
どうやら私は薬を飲んですぐに眠ってしまったらしい。
今度は、速人の指が身体のあちらこちらへ触れるたびに敏感に反応しているという、セクシャルな夢を見てしまった。
夢の中の私は、速人のキスを受け入れて身体を差し出していた。
しばしぼんやりした頭でいると、背後から温かい感触に包まれていることに気付いた。
夢で見たのと同じ指がパジャマの中に入り込み、私の身体をゆっくりと撫でていることにも。
いつから、こうなってる?
さっきのは確かに、夢よね?
あまりの生々しさに、心許ない気持ちにさせられる。
後頭部に緩やかな規則正しい呼吸を感じ、そっとその腕を外そうと試みたものの、更に引き寄せられてしまっただけだった。
私は何とか寝返りを打ってようやく、胸の膨らみの下側を優しく撫でる片手から逃れることに成功した。
ただその分、速人の寝顔が間近に来てしまい、こっそりと彼を観察した。
柔らかな表情をして寝ている速人は、いつもより若く感じる。
この込み上がる感情は何だろう。
変な夢のせい? 単なる性欲?
瀬戸課長は、速人は私に執着していると言ったけれど、執着していたのは私の方かもしれない。
速人の近くにいることも拒んだが、遠く離れることも出来なかった。
借金と引き換えの約束だと、速人がそれを口にしたのはただ1度だけ。でも、私を凍らせるには充分だった。