純愛は似合わない
彼女は速人の態度に唇をキュッとすぼめ、私の腕をとってソファへ腰掛けるように促した。
そして小声で「コーヒーを入れるわね」との一言を残して、そっと部屋を出て行った。
シンプルかつモダンな革張りの黒いソファへ座らされた私は、手持無沙汰なまま部屋を眺める。
黒と木目を基調としたその部屋は主人を変えただけで、観葉植物の位置すら変わっていない。
増えたのは、壁に掛かった絵くらいなものか。
夜になれば間接照明を浴びるだろう位置にあるその絵は、色とりどりの花が鮮やかに描かれているのだが、絵心の無い私にはその良し悪しも分らない。
ただ複雑に鮮やか過ぎて、とても気持ちが落ち着く絵とは思えなかった。
変な趣味……。
松中さんがコーヒーを入れて戻って来てくれたが、それでも速人は黙って書類を読んだままだ。
呼びつけられた上にシカトされている私を不憫に思ったのか、松中さんはわざわざ「社長、コーヒーが入りました」と、速人の机の前に立った。
ようやく目を上げた速人は、軽く肩を竦めて「少しの間、電話は取り次がないで欲しい」と松中さんに指示を出す。
松中さんは、有無を言わさない速人の態度に背を向けた途端、私に口をへの字に曲げてみせた。
彼女の顔を見て、思わず苦笑を浮かべた。
ごめんなさいね、松中さん。その男の態度が悪いのは、私限定だと思うから。
そして小声で「コーヒーを入れるわね」との一言を残して、そっと部屋を出て行った。
シンプルかつモダンな革張りの黒いソファへ座らされた私は、手持無沙汰なまま部屋を眺める。
黒と木目を基調としたその部屋は主人を変えただけで、観葉植物の位置すら変わっていない。
増えたのは、壁に掛かった絵くらいなものか。
夜になれば間接照明を浴びるだろう位置にあるその絵は、色とりどりの花が鮮やかに描かれているのだが、絵心の無い私にはその良し悪しも分らない。
ただ複雑に鮮やか過ぎて、とても気持ちが落ち着く絵とは思えなかった。
変な趣味……。
松中さんがコーヒーを入れて戻って来てくれたが、それでも速人は黙って書類を読んだままだ。
呼びつけられた上にシカトされている私を不憫に思ったのか、松中さんはわざわざ「社長、コーヒーが入りました」と、速人の机の前に立った。
ようやく目を上げた速人は、軽く肩を竦めて「少しの間、電話は取り次がないで欲しい」と松中さんに指示を出す。
松中さんは、有無を言わさない速人の態度に背を向けた途端、私に口をへの字に曲げてみせた。
彼女の顔を見て、思わず苦笑を浮かべた。
ごめんなさいね、松中さん。その男の態度が悪いのは、私限定だと思うから。