純愛は似合わない
背中の方からはガヤガヤした話し声と、微かに聞こえるイージーリスニング。

「まぁ、ちょっとした助っ人みたいなものなんでね」

穂積さんは気分を害することも無く、穏やかに話す。
そして当然のことであるように、速人が以前から愛飲していたロイヤルハウスホールドをロックで差し出した。


「で、何がそう思うなんです? 穂積さん」

あー、もう。
話しは振らない、戻さない。

心の中で毒付き、思わず速人を見上げる。

先週以来、初めて速人と交わした視線。
速人の探る様な、瞳。

彼の視線の方が先についと逸れて、首の辺りを彷徨った。


……自分の付けた痕を探している?


「何って、お嬢が頑固ものだって話しだよ」

「ああ」

まるで隠語でも話しているかのように、2人が顔を見合わせて笑った。

そんな男2人の反応に敷島紫は、何が可笑しいの?と言わんばかりだ。
そして誰のことを話しているのかということに気付き、私を冷たい目で見据える。

その間、私は1度として言葉を発していないのに。


「頑固でも頭が固くてもケッコウでーす。それでは失礼しまーす」

……決して逃げる訳じゃない。
懇親会という名の就任パーティで、揉め事も争い事も起したくないだけだ、と自分に言い聞かせた。

嫌味なくらい微笑むことが出来た自分を、褒めてやりたいーー私はヒロに救い出された喧騒の中へ舞い戻った。






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