豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
シーン19が終わると、ゆうみは元のゆうみに戻った。三池の顔をじっと見つめる。
「わかった。このままで行こう」
三池が頷いた。
ゆうみの頬に笑みが広がる。それから孝志に視線を向けた。
孝志はそんなゆうみを、優しげに見つめていた。
腕を組み、微笑んで。
同じ場所にいる人たちにしかわからない、感情のやりとり。
ゆうみは静かに舞台を降りると、まっすぐ光恵の方へ歩いて来た。
「本当にすばらしかった」
光恵は心からそう賞賛した。
「ありがとうございます」
ゆうみは頭を下げ、それから光恵に「これで、フェアに戦える」と言った。
光恵は訳が分からず「は?」と間抜けな声を出した。輝も「なんのこと?」とつぶやく。
「彼は少しノスタルジックになっているだけ。勘違いだと、すぐに気づきます」
光恵はぽかんと口を開けたままだ。
「あなたには渡しません」
ゆうみはそういうと、にこりと笑った。