豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~


いつも通り、一番奥のテーブルに座わった。続いて輝も隣に座る。ここならあの二人は、視界に入らないはず。とにかくこの場をやり過ごすのに最適な場所だ。


他の役者が「ここいい?」と光恵の前に座ろうとすると、「そこ、ゆうみと孝志に座らせてやれ。他の客から見えないから」と三池から声がかかった。


まじでか?


表情に出てしまったのか、輝が「大丈夫です」と声をかけてくる。「ありがとう」と小さく返事をして、気づかれないように小さく息を吐いた。


結果奥のテーブルには、この四人と劇団員四人、計八名が座った。目をあげるとゆうみの顔が視界に入る。すぐ隣に孝志。光恵は視線を落として、膝に置かれた手をじっと見続けた。


あの二人の顔を見るより、自分の平凡すぎる手を見ていた方が、よっぽどいい。


すると隣から、そっと輝が手を握ってきた。驚いて顔をみると、輝はにっこりと笑ってみせる。ゆうみは輝が手を握ったことに気づいたようだ。うっすらと笑みを浮かべる。


なんか……怖い。


孝志は気づいたのかそうじゃないのか、表情が変わらない。静かに輝の顔を見ている。


それも、なんだか怖いってば。


なんだ、この飲み会。
これじゃとてもじゃないけど、親睦ははかれないよ……。


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