豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「言わないほうがいいよな」
予想に反して孝志が言った。てっきりすねると思ったのに。
「俺も、誰にも言ってないし」
「そう……なんだ」
あれ、自分のことは棚にあげといてなんだけど、ちょっとムカっときた。
光恵はごまかすためにワインを飲む。アルコールが身体を巡るのが分かった。
「孝志はよく、こうやって家でお酒飲むの?」
「まあね。おれが演った『高坂』よりはおとなしい感じではあるけど」
「『高坂』? 誰それ」
光恵は首を傾げた。
「えー、ミツ。俺の出た作品、見てないの? 結構ヒットしたのに。っていうか、もしかして一つもみてない?」
「はは、忙しくて」
光恵は笑ってごまかすしかない。見事に一つも見てないからだ。
だって、見られなかった。
あんなキスをされた後で、架空の孝志と現実の孝志、どうやって区別をつけろと?
「見てよ。頑張ったから、あ、でも」
孝志がちらりと光恵を見る。
「この間の映画は、見なくてもいい。あれは刺激が強すぎるから」