13年目のやさしい願い


具合が悪くなった時だって、急を要するモノなのか、様子を見ていい程度なのか、場所が心臓だけに判断を誤ると大変なことになる。

裕也さんの考えはもっともだと思った。

それに、裕也さんは抜群に頭がよかったから、医者というのはムリしなくても手が届く職業だったんだ。




だけど、ハルの家は総合病院を経営していて、母さんもじいちゃんも医者という環境。

アドバイスはいくらでももらえるし、疑問にだって、いつでも答えてもらえる。

オレは子どもながら、自分が医者になる必要はないと思った。

それに正直、子どもながら、こうも考えた。



休みがちなハルより勉強ができないオレが、医者なんてあり得ないよな?



何より、具合が悪くて学校を休んでいても、入院していても、まるでハルの側にいられない、いつも忙しくしてるハルの母さんを見てると、医者になるのが良いとはとても思えなかった。



だって、オレはとにかくハルの側にいたいんだから。



だけど、それじゃあ何を目指そうかと考えても、その時のオレには何も思い浮かばなかった。



……そして、オレは今でも、どうするのが一番いいのか迷っている。

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