13年目のやさしい願い
ある時、瑞希ちゃんは言った。
「ねえ、陽菜ちゃん」
「なあに?」
「……負けちゃ、ダメだよ」
「なにに?」
わたしが首を傾げて不思議そうにすると、瑞希ちゃんは、ベッドで身体を起こしていたわたしをギュッと抱きしめてくれた。
その時は、わたしが入院してた。
「たくさんの悪意に」
瑞希ちゃんは話してくれた。
瑞希ちゃんの心臓は、赤ちゃんの時の手術で上手く治っていて、中学生になるまで、ずっと普通に生活できていたって。
運動制限もなかったから、瑞希ちゃんは走ったり泳いだりもできたんだって。
わたしには考えられないことだった。
そんなこともあるんだと、驚いた。
瑞希ちゃんは、中学一年生の時に倒れて、心肥大がひどいことが分かって、大きな手術をして、でも完全に治すことはできなかった。
走れないし、ムリできない身体になって、瑞希ちゃんは、いじめられた。