13年目のやさしい願い


唐突に、おばさんがおじさんの腕を取った。



「ねえ、せっかくの日曜休みだし、久々にデートしましょうか?」

「え?」



と、おじさんが驚いた顔でおばさんを見た。



「何年ぶりかしら?」

「何年ぶりはないだろ。結婚記念日は毎年、2人で祝ってるじゃないか」



と、突然の話なのに、相好を崩しておばさんを見ながら話すおじさん。

お互いに忙しい仕事をしていて、すれ違いの毎日のはずだけど、実はこの2人はかなり仲が良い。



「ふふ。そうよね。でも、結婚記念日くらいじゃない? しかも、大抵、食事をするくらいでしょう?」



おばさんがおじさんの腕に、自らの腕を絡ませた。

おじさんもまんざらではない表情。

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